最終更新:2026年9月10日
このページの立場
本ページは、OpenAIが公開している情報(公式リポジトリ、発表ページ、APIのデータ利用ポリシー)を引用・整理したものです。公式に確認できない仕様やセキュリティ上の問題を推測で書くことはしていません。記載は最終更新時点のもので、仕様やポリシーは変更されることがあります。判断の前に必ず提供元の最新の記載をご確認ください。Whisperは OpenAI が公開しているモデルです。
「Whisperを使う」には2通りある
Whisperは、OpenAIが2022年9月21日に発表した音声認識のモデルです。公式の発表ページには、68万時間の多言語・マルチタスクの教師ありデータで学習させたこと、モデルと推論コードをオープンソースとして公開したことが記載されています。
ここが安全性を考えるうえでの分岐点になります。公開されているのはモデルそのものなので、動かす場所は選べます。そして、どこで動かすかによって音声の行き先が変わります。
| 使い方 | 音声はどこへ行くか | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 自分の端末で動かす (公開モデルを導入して実行) |
文字起こしのために音声を送信する必要がありません。処理は手元の計算資源で行われます。 | 導入・保守を自分で行えるか。端末のスペック。 |
| OpenAIのAPI経由で使う | 音声はOpenAIのサーバーへ送信されます。学習利用と保持期間はAPIのポリシーが定めます。 | APIのデータ利用ポリシー。社内規程で外部送信が許されるか。 |
| 「Whisper搭載」の第三者ツールを使う | 端末内で動くものも、事業者のサーバーへ送るものもあります。製品ごとに異なります。 | その製品の公式情報。後述の3つの確認。 |
「Whisperだから安全」も「Whisperだから危険」も、どちらも成立しません。安全性を決めるのはモデルの名前ではなく、実行される場所です。
端末で動かす場合、音声はどこへ行くか
公開されているモデルを自分の端末で実行する構成では、文字起こしのために音声をどこかへ送る必要がありません。公式リポジトリには「Whisper's code and model weights are released under the MIT License.」と記載されており、コードとモデルの重みを取得して手元の環境で実行できます。
この方式が情報システム部門の審査で扱いやすいのは、「対策を講じている」ではなく「そもそも該当しない」と答えられる点です。送信先・保管期間・学習利用という3つの主要な論点が、構造的に発生しません。
ただし、次の2点は正確に理解しておく必要があります。
- 導入時には通信が必要です:ライブラリやモデルを取得する段階ではインターネット接続が要ります。「導入後の日常利用がオフラインで完結する」ことと「一切通信しない」ことは別の話です。
- 要約や整形を外部AIに任せると、そこで外に出ます:文字起こしをローカルで行っても、結果をクラウドの生成AIに貼り付けた時点で本文は社外へ渡ります。近年もっとも増えている経路です(ローカルAI要約ガイド)。
API経由の場合、公式ポリシーが定めていること
同じWhisperでも、OpenAIのAPIで音声認識を利用する場合は音声をOpenAIのサーバーへ送信します。APIのデータ利用ポリシーには、次の内容が記載されています。
- 学習利用:「By default, we do not use your business data for training our models.」(既定では顧客の業務データをモデルの学習には使用しない)
- 保持期間:サービスの提供と不正利用の検知のため、APIの入出力を最大30日間安全に保持する場合がある旨が記載されています。
- ゼロデータ保持:条件を満たす用途であれば、対象のエンドポイントについてゼロデータ保持(ZDR)を申請できる旨が記載されています。
これは、外部送信が許容される環境であれば十分に検討に値する条件です。逆に、そもそも音声を社外に出せない規程がある場合は、ポリシーの内容にかかわらず選択肢になりません。ここでも判断を分けるのは対策の水準ではなく、外部送信の可否です。
※ 消費者向けのチャットサービスと、開発者向けのAPIとでは、データの取り扱いに関する条件が異なります。社内審査では「どの窓口経由で使うか」まで特定して確認してください。
「Whisper搭載」と書かれたツールの確認手順
いま、多くの文字起こしツールが「Whisperを採用」と表示しています。その表示自体は、安全性について何も保証しません。同じモデルは端末上でもサーバー上でも動くからです。特定の製品について当サイトで断定はしませんが、確認の手順は共通です。
- 公式情報に「音声の送信先」が書かれているかを探す。書かれていなければ、書かれるまで前提にしない。
- ネットワークを遮断した状態で文字起こしできるかを実際に試す。オフラインで完走するなら、少なくともその処理は端末内で行われています。
- 規約に保管期間と学習利用の記載があるかを確認する。無料プランと有料プランで条文が分かれていることがあるため、自分が使うプランの条文を読む。
読み取れない場合は提供元に問い合わせ、回答を文書で残してください。稟議・監査で通用するのは口頭の説明ではなく記録です。クラウド型を使う前の確認項目はセキュリティガイドの7項目にまとめています。
自分で構築する場合に必要なもの
公式リポジトリに記載されている必要環境と、モデルごとの必要VRAMの目安は次のとおりです。
| 項目 | 公式リポジトリの記載 |
|---|---|
| ライセンス | コードとモデルの重みはMITライセンスで公開 |
| 実行環境 | Python(3.8〜3.11で互換とされています)、PyTorch、ffmpeg、tiktoken が必要 |
| モデル別の必要VRAM | tiny 約1GB/base 約1GB/small 約2GB/medium 約5GB/large 約10GB/turbo 約6GB |
| 対応 | 多言語の音声認識・翻訳・言語識別に対応 |
出典:OpenAI Whisper 公式リポジトリ、OpenAIによる発表ページ。仕様は更新されることがあります。
実務上の注意点として、導入して終わりではありません。ライブラリの更新、環境の再構築、複数台への展開、使う人が技術者でない場合の操作方法の整備まで含めて、運用の手間が発生します。1台で自分だけが使うなら軽いコストですが、部署単位で配るとなると話が変わります。
自前構築が向く人・向かない人
自前構築が向いている
- コマンド操作に抵抗がなく、環境構築を自分で解決できる
- 使うのは自分(または技術者)だけ
- 処理内容を細かく制御したい・他のシステムに組み込みたい
- 費用をかけずに、まず試したい
自前構築が向いていない
- 使うのが技術者ではない(総務・医療事務・士業の補助担当など)
- 端末にソフトを自由にインストールできない規程がある
- 複数台へ配布し、同じ手順で運用する必要がある
- 環境構築に時間を使えない/トラブル時に頼れる窓口が要る
右側に当てはまる場合は、「ローカルで動かす」という要件は変えずに、環境構築を肩代わりする方法を検討することになります。手順の全体像はローカル文字起こしガイドにまとめています。
ローカルでも残るリスク
端末内で完結させても、安全になるのは「外部送信」に関する部分だけです。次のリスクは残ります。
- 端末の紛失・盗難:暗号化されていないノートPCに機密会議のテキストが残っていれば、そこから漏れます。ドライブの暗号化で被害を大きく減らせます。
- 保存先の権限不備:出力先を共有フォルダに置いたまま権限を絞っていない、というのはよくある状態です。
- 共有時の事故:リンク共有の誤設定、宛先を間違えた添付送信。
- 要約の外部AI利用:前述のとおり、ここで本文が出ます。
- 廃棄ルールの不在:残っているデータは、漏れる可能性のあるデータです。
具体的な運用は安全に運用する7つの実践にまとめています。
環境構築なしで端末内完結にする選択肢
当サイトで提供している「完全ローカル文字起こし」は、ローカル実行に必要なものをあらかじめ同梱したWindows向けソフトです。事実関係のみ記載します。
- 推論エンジンは faster-whisper(CTranslate2)、モデルは Whisper large-v3。AIモデルを同梱しているため、導入後の文字起こしに通信は不要です。
- 音声・録音・テキスト・要約結果を外部に一切送信しません。ネットワーク未接続でも全機能が動作します。
- インストール不要(ZIPを展開するだけ)。管理者権限を必要としません。
- mp3 / wav / m4a / mp4 / mov など24のファイル形式、96言語に対応。
- GPUは不要で、GPUがなくても全機能が動作します(あれば文字起こしが高速化します)。
- 個人利用は無料。商用・法人利用は月額500円(税込)/年額5,000円(税込)、買い切り(永続ライセンス)は1ライセンス15,000円(税込)。導入検証は2週間無料、インボイス(適格請求書)に対応しています。

情報システム部門への申請に使える回答例はセキュリティガイドの審査項目に、法人での導入条件は法人向けページにまとめています。
よくある質問
※ 本記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。ライセンスの解釈や具体的な事案については、自社の法務部門や専門家にご確認ください。第三者の製品・サービスの仕様や規約は、当該提供元の公式情報が優先します。