最終更新:2026年9月11日
この記事の要点
- Whisperは2022年にOpenAIが公開したオープンソースの音声認識AI(MITライセンス)で、無料で利用できる。
- 自分で構築する場合はPython・FFmpeg・faster-whisperなどの導入が必要だが、GPUがなくてもCPUだけで動作する。
- Whisper large-v3をインストール不要で使う方法もあり、ZIPを展開して音声をフォルダに置くだけで文字起こしできる。
- 完全ローカル文字起こしはVer.2.0.0でfaster-whisper(CTranslate2)を採用し、従来比で約3.7倍の高速化・約62%のメモリ削減を実測している。
- 自分のPC上でWhisperを実行する限り音声は外部に送信されないが、OpenAIのAPI版Whisperはクラウドへ音声を送る点が異なる。
Whisper とは?
Whisperとは、OpenAIが2022年に公開したオープンソースの音声認識AIモデルで、MITライセンスのもと誰でも無料で利用できます。日本語を含む多数の言語に対応し、雑音のある音声でも高い認識精度が得られることから、文字起こし用途で広く使われています。
Whisperにはモデルサイズの異なる複数の種類があり、精度と処理の重さがトレードオフの関係にあります。用途に応じて選ぶことが重要です。
| モデル | 精度 | 速度・必要リソース | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| tiny | 低 | 非常に軽い | 動作確認・下書き |
| base | 低〜中 | 軽い | 低スペックPCでの試用 |
| small | 中 | 中程度 | 速度と精度のバランス重視 |
| medium | 中〜高 | やや重い | ある程度の精度が必要な用途 |
| large-v3 | 最高 | 重め(メモリ多め) | 議事録・字幕など高精度が必要な用途 |
ここで注意したいのは、Whisperをどこで実行するかによって、音声データの行き先がまったく異なるという点です。自分のPC上でWhisperを実行する「ローカル実行」であれば、音声は外部に一切送信されず、PC内だけで処理が完結します。一方、OpenAIが提供するAPI経由でWhisperを利用する「API版」では、音声認識のために音声データをOpenAIのサーバーへ送信する仕組みになっています。同じ「Whisper」という名前でも、この違いは安全性の観点で重要です。詳しくはWhisperをローカルで使う場合の安全性ガイドで解説しています。
Whisper の派生実装(faster-whisper / whisper.cpp / WhisperX)の違い
Whisper本体をそのまま使うほか、目的に応じて高速化・機能拡張した派生実装が公開されています。代表的な3つの違いは次のとおりです。
| 実装 | 特徴 | 向く人 |
|---|---|---|
| faster-whisper | CTranslate2という推論エンジンでWhisperを再実装したもの。同じ精度を保ちながら高速・省メモリに動作する。 | 速度とメモリ効率を重視する人 |
| whisper.cpp | C/C++で実装された軽量版。Pythonの実行環境がなくても動かせる。 | 軽量な環境で動かしたい開発者 |
| WhisperX | 話者分離や単語単位のタイムスタンプなど、Whisper本体にない機能を拡張したもの。 | 誰の発言か・単語ごとの時刻まで必要な開発者 |
このうちfaster-whisperは、Whisperと同じ認識精度を保ちながら処理速度とメモリ使用量を大きく改善できる点が特長です。当サイトの「完全ローカル文字起こし」もVer.2.0.0で推論エンジンをfaster-whisper(CTranslate2)へ刷新し、同じWhisper large-v3の精度を保ったまま約3.7倍の高速化・約62%のメモリ削減を実測しています(計測条件はリンク先参照)。
方法A:Python で faster-whisper を自分で動かす手順
プログラミングの知識がある方向けに、faster-whisperを自分のPCに導入する一般的な手順を紹介します。無料で柔軟にカスタマイズできる反面、環境構築の知識が必要です。
- Python(3.10〜3.11 など)をインストールする。
- 音声デコード用に FFmpeg を用意する。
pip install faster-whisperで音声認識ライブラリを導入する。- (任意)GPUで高速化する場合は、対応する CUDA / cuDNN を準備する。CPUのみでも動作する。
- モデル(tiny〜large-v3)を指定して、文字起こしを実行する。
日本語の音声を文字起こしする最小限のサンプルコードは次のとおりです。
from faster_whisper import WhisperModel
model = WhisperModel("large-v3", device="cpu", compute_type="int8")
segments, info = model.transcribe("meeting.mp3", language="ja")
for s in segments:
print(f"[{s.start:.1f}s] {s.text}")
つまずきやすい点
- FFmpegのパス:FFmpegを導入しても、PCがその場所を認識できる状態(パスが通った状態)になっていないと、音声を読み込めずエラーになります。
- CUDAのバージョン不一致:GPUで高速化する場合、CUDAやcuDNNのバージョンがライブラリの要求と合っていないと、GPUが使われずCPU動作にとどまったりエラーになったりします。
- メモリ不足:large-v3のような大きいモデルは多くのメモリを必要とするため、PCのメモリが少ないと処理が途中で止まることがあります。
- 日本語の句読点:Whisperの出力には句読点が不足したり不自然になったりすることがあり、そのままでは読みにくい文章になる場合があります。
方法B:インストール不要のソフトで Whisper large-v3 を使う
プログラミングの知識がなくても、Whisper large-v3をあらかじめ同梱したソフトを使えば、環境構築なしで文字起こしを始められます。たとえば当サイトの「完全ローカル文字起こし」は、Whisper large-v3を含むAI一式を同梱したWindows向けソフトで、次の3ステップだけで使えます。
- 配布されているZIPファイルを、任意のフォルダに展開する(インストール作業は不要)。
- 文字起こししたい音声・動画ファイルを、指定のフォルダに置く(対応形式はmp3・wav・m4a・flac・mp4など24形式)。
- 自動的に始まる文字起こしの結果を確認する(完了するとテキストファイルとして保存される)。

処理はコマンド操作を挟まず、すべてPC内で完結します。インターネットに接続していなくてもフル機能で動作し、音声・テキストは外部に送信されません。
GPU は必要?CPU だけでどこまで動くか
結論として、Whisperの実行にGPUは必須ではありません。faster-whisperはCPUでも動作するよう最適化されており、ノートPCでもWhisper large-v3による文字起こしが可能です。目安となる動作要件は次のとおりです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 最小動作環境 | メモリ8GB・CPU4コア |
| 推奨環境 | メモリ16GB・CPU8コア |
| GPU | 不要(NVIDIA GeForce RTX 30系以上があれば3〜5倍程度高速化) |
| GPU利用時の追加データ | GPU追加パック 約1.27GB |
| 実測ピークメモリ | 約3.5GB |
※ 完全ローカル文字起こしにおける実測値・目安値です。GPUがある場合は追加パックを導入することで高速化できますが、導入しなくても全機能がCPUのみで動作します。
日本語の精度を上げるコツ
Whisperで日本語の精度を上げるには、モデルの選択と音声品質、そして誤認識の補正の3点が重要です。
- large-v3を選ぶ:モデルサイズが大きいほど精度が高くなります。日本語の議事録や字幕など精度が重要な用途ではlarge-v3を選びます。
- クリアな録音を心がける:マイクとの距離や周囲の雑音は認識精度に影響します。できるだけクリアな音声を用意することが精度向上の基本です。
- 単語登録で固有名詞を補正する:完全ローカル文字起こしでは、誤字を直して保存すると次回から自動的に正しい表記へ変換される単語登録機能があります。
- 固有名詞のAI提案を使う:Ver.4.5.0以降では、AIが固有名詞の表記を提案する機能も利用できます。
- 「整形前」タブで置換前のテキストを確認する:単語帳(ユーザー辞書)による自動置換の直前のテキストを残しておき、最終テキストと切り替えて見比べられます。置換の影響で意味が変わっていないかを確認でき、表記の変更履歴を追う必要がある業務でも安心です。
自前構築とインストール不要ソフトの比較表
WhisperをWindowsで使う2つの方法を、導入のしやすさと機能の観点で比較しました。
| 観点 | Python等で自前構築 | インストール不要ソフト(完全ローカル文字起こし) |
|---|---|---|
| 費用 | 無料(OSSはMITライセンス) | 個人利用は無料/商用は月額500円・買い切り15,000円(各税込) |
| 環境構築 | 必要(Python・FFmpeg・任意でCUDA) | 不要(ZIP展開のみ) |
| GPU要否 | 任意(なくても動作、あれば高速化) | 不要(あれば3〜5倍程度高速化) |
| 話者分離 | WhisperX等を自分で組み込む必要あり | AI話者分離に対応(モノラル音声でも話者を推定、ビジネスプラン対象) |
| 要約 | 別途ローカルLLM等を自分で実装 | ローカルAI要約に標準対応(ライセンス登録が必要) |
| サポート | コミュニティ情報を自分で調べる | 提供元によるサポートあり |
| 向く人 | 開発者・カスタマイズしたい人 | 非エンジニア・環境構築せず業務で使いたい人 |
よくある質問
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